第15回☆前日譚小説☆~千代編~

更新日:2022-12-03





「 千代ねえさま。本日のお客さまがお待ちになられているようです 」



 可愛らしい声が、後ろから姿見越しで目が合うウチ――わたしを呼んでいた。
 鈴のような、それで確かな芯がある、自分への愛を感じさせてくれる……聴けば思わずと気持ちよくなってしまうほど、大好きな声。



「 はぁい樹里ちゃんありがとー! さてさてぇ、今日はどぉんなヒトかなぁー 」



「 えぇっと……本日はお一人。ご年れいが五拾七歳で、ご注文としてはえっと……《 上から 》?とのことでした 」



「 なるほどなぁ。じゃあ今日はワガママでも全然許してくれそうだねー。ウチもいっぱい気持ちよくしてもらおっ 」



「 千代ねえさま千代ねえさま。《 上から 》だと、そのようにお客さまへごふる舞いをすればよいのでしょうか? 」



「 ん? そおそお。そんな感じで言ってくるヒトはねぇ、ウチらからお願いされるがイチバン喜んじゃったりするから。
 ウチらが気持ちよくなるように、つよーくお願いするのがオキャクさんのためでもあるんだなぁー 」



「 なるほどっ、樹里は覚えました! もっともっとお習いして、ねえさまたちのお手伝いが早くできるよう頑張りますねっ! 」



 素直にわたしの言葉を受けとって、妹であり、《 お仕事 》のお世話係をしてくれる樹里ちゃんが眩しい笑顔を向けてくる。



 ――ああ、もう! ホント可愛い……!



「 ……樹里ちゃん、ウチがちゃーんとしたトコ用意して、ずっとずっといっぱい面倒みてあげるからね。――おねえちゃんに任せなさい! 」



「 ? はいっ! ジュリはねえさまにお任せしますねっ 」



 わたしはこの子の、こんな純粋なところが大好きでたまらない。そしてここからもっともっと、わたしの色に育ててあげるのだ。



 可愛いものは、このわたしの世界でとても綺麗で《 トウトイ 》もの。
 わたしはそれらが欲しくて、自分の手の中で収められることに、すごく充実を感じる。感じている。



 この子をわたしのモノにして、わたしと一緒の場所に並んでくれるようになることで……
 わたしたちは何にも代えがたく、切れることのない繋がりを持つ《 ホンモノの家族 》に、きっとなれるのだ。



「 ――よおしっ。じゃあ、行ってくるねぇ。樹里ちゃんも、今日はアッチにあがっちゃっていいから、お仕事がんばってねっ」



「はい! いってらっしゃいませ、ねえさまっ!」



 樹里ちゃんの夏に咲くヒマワリみたいな笑顔に送られて、わたしは《 お仕事 》へあがっていった。






 …………






 ……






 …






「 ――ねえねえ、キモチいぃ? これキモチいいの? 」



「 ああっ……! ああっ気持ちいいよ千代ちゃんっ!! りょ、両方っ……! 両方のでやって……! 」



「 はいは~いっと。わかりっ、ましたあっ、っと! 」



「 ぬぉお……!! い、いいよ千代ちゃんんん! 」



 ヒトのソレを足袋を履いた足のひらで、ひと際にと強く擦りあげる。



 たまにコレをお願いしてくるオキャクさんがいて、付いて無いわたしにはこんなコトされてるときの感覚なんてこれっぽちもわかんないけど、
 わたしのやることでこんなに気持ち良さそうなカオをされちゃうと、なんだか楽しくなってきちゃうのだ。



 わたしは自分のモノみたいにできるのが、ホントに好きなんだなぁ。



「 あっ……アッ……! で、出ちゃうかもっ……! 出しちゃうかもぉ!! 」



「 オジさんってば、はっや~い! まっ、でも良いよぉ、出しちゃっ、てもっ! 」



「 アッ……ああっ! 」



「 どーせ、い~っぱい、溜めて、きてるん、でしょっ? またすぐ、できる、よねっ……!! 」



「 で、るぅうっっ!!!! 」



 ドクッビュッ! ビュビュッ! ビュルルルルルッ!!



 足のひらでドクドクとした感覚を受けながら、わたしはモノの擦りを止めない。
 オキャクさんの「 あッ……あッ…… 」なんて、恍惚に歪んだ情けなく高い声が続く。



 ビクビクと小刻みに痙攣してるとこを見てると、いつか見た調理さん――
 流子さんがまな板で生きたお魚の頭へ、杭みたいなのを打ち付けている光景を思い出してた。



 このオキャクさんはそのとき見たヤツみたいに、わたしに……せーさつよだつ……だっけ?



 そんなものを持たれてるんだぁとか思っちゃって、なおさらに背筋がゾクリって、なんだか興奮してきちゃうんだ。



 オキャクさんが出し切ったのを見てから、湿りを帯びた足袋を脱いで臭いを嗅ぐ。
 生臭い《 コレ 》も、お魚みたい。そう思ったら、なんだかこのクサい臭いも嫌いになれなかった。



 わたしは自分の股が、この手にある足袋と同じだけ湿ってるのを感じる。もう、内股を伝いそうなくらい。



 僅かに残っていた身に着飾ってたものを邪魔くさく全部とっぱらって裸になると、
 仰向けになって息をハッハとさせながらグデっとしてるオキャクさんの顔に跨る。零れそうなくらいになってる股をそのまま口へ押しつける。



「 んグッ!? 」



「 ――ねえ、ウチのもペロペロして? いっぱい濡れちゃってるの、わかるよね。オジさんがまた元気になるまで、ウチの綺麗にして? 」



 言い終わるかってくらいの反応でオキャクさんは両腕でわたしの腿を掴み支えると、言ったままに縦筋へと舌を触れてくる。



「あンっ、あぁ……いいよお……おじさんって上手だねぇ……あっスゴ……」



 ぴちゃぴちゃと、どんどん舐め吸いとられていく粘着質な液体。
 オキャクさんは時々、ゴクゴクと喉が動いてて、そのうち中へナカへと舌が入り込んでくるのを感じる。



 舌が入り込んだり抜けたりが速く早くなってきて、わたしは気持ちよさにさっきまでのこのヒトみたいに、恍惚の声で部屋をいっぱいにした。



 そのうち、気が飛んじゃうくらいの気持ち良さが襲ってきて小さく身体が痙攣する。
 そんなのを繰り返すたびに、舐めとられたはずのいやらしいおツユがまたいっぱいに溢れ出ちゃう。



 二回もソレを繰り返したときには、ふと下を見ればオキャクさんのソコもすっかり元気で天井に向いてる。
 やっぱり一杯に溜めてきたんだ。これなら、まだまだいっぱい気持ちよくなれそう。



 足りない。足りない。足りない足りない。次、次は、次はね。もっと、もっと……!



 ――ねえ、気持ちよくして?



 ――ほら、気持ちよくなろ?



 ――わたしたちはこんなので、こんなに簡単に気持ちよくなれちゃうんだよ?



 ――やらなきゃ、生きててつまんないでしょ?



 ――楽しもうよ。






 抜粋
 小説: 千代のユウウツ
 文:麻木ななみ


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